系統分析 の実験 (2)
(引き続き 陽イオンの系統分析)
(3) 試料液 V の分析: ・・・ 第3属 系統分析フロー
試料液 V を、2ml分取。
第3属は、Cr3+の色が強いのでフェノールレッドは使わず、pH紙でpHを測る。 飽和NH4Cl 2滴を加えて、濃NH3(この場合2滴程度でよい)で
pH=8.0〜9.5とする。 (第4属のNi、Co、Znはアンミン錯体溶、第5属は水酸化物を沈殿しない) これを加温し、飽和臭素水(Br、 Fe(U)→Fe(V)、 Mn(U)→Mn(V、W)に酸化)10滴加えて 数分間加温する。
これをろ過管でろ過(脱脂綿をきつめに詰める)し、沈殿物を、飽和NH4Cl
2滴+6M NH3 2滴+水4ml で洗浄する。 → ろ液は無色透明になる。ここでは終わり。
細い棒で綿を押し出し、付着している沈殿を 水2mlで石英るつぼに洗い落とす。(綿をよく絞る) 6M
NaOH 10滴、3%H2O2 20滴を加え 煮沸・撹拌し、ろ過管でろ過する。(ろ液にはAl(OH)4−、CrO42−が残る。黄色の液) 沈殿の一部を取っておく。(→ Mn 確認用)
ろ液に フェノールフタレイン1滴と 6M酢酸 を加えて ちょうど無色(pH<8.3)とする(酸性にしないように注意)。
溶液を2つに分け、一方に Pb(NO3)2 一滴 → PbCrO4 の黄色沈殿 (Cr の確認)。 もう一方に、0.5%アルミノン一滴加え、2、3分加温し
1M (NH4)2CO3 4滴加え(アルカリ土類落とす)静置 → 赤色のレーキ沈殿、上澄みは赤くない (Al の確認)
残りの沈殿を 6M HNO3 10滴、水2mlで洗い落とし、5%塩酸ヒドロキシルアミン2滴を加えて煮沸する。(Fe(OH)3→Fe(V)、Mn(OH)n→Mn(U)) 溶液を二つに分け、一方に
0.1M KSCN一滴 → 赤色沈殿(Fe(V)の確認@)、 もう一方に、0.025M K4Fe(CN)6 一滴 → 濃青色沈殿(Fe(V)の確認A)
NaBO3が無いので、先にとっておいたMn(OH)n+Fe(OH)3の沈殿を 一粒のKOH+少量のKClO3粉末と
Ni 片上で、アルコールランプの火で弱く赤熱し、青緑色(K2MnO4)になることを確認。さらにNi
片ごと希H2SO4に投入すると、上澄みがKMnO4の 赤紫色になる。 (Mnの確認)
(4) 試料液 W の分析: ・・・ 第4属、第5属 系統分析フロー
試料液 W を、2ml分取。
第4属は Ni だけなので、試験液にそのまま6M NH3 1、2滴を加え、pH=8.0〜9.5とする。(Niはアンミン錯体、第5属は沈殿しない) 0.5M (NH4)2S 4滴加え3−4分加温し、ろ過管でろ過する。(沈殿は黒色の NiS) (→ ろ液は、第5属へ) 沈殿を水2ml+飽和NH4Cl
で洗浄する。 (ろ液は捨てる)
脱脂綿ごと沈殿を10ml石英るつぼに入れ、6M HCl 4滴、5%NaClO
10滴を入れて 蒸発・ほぼ乾固し、水2ml加える。 溶液に、6M NH3 4滴、ジメチルグリオキシム1滴 → ピンク赤色沈殿 (Niの確認)
第5属は、2mlの分析では非常にロスが大きかったので、再度、5ml取って行なった。(他に高感度の検出方法が無いので、炎色反応に頼ることになる。)
まず上と同様にNiを除き、そのろ液に6M HNO3 5滴加え 30ml石英るつぼで2〜3mlになるまで加熱蒸発する。(H2Sを抜く) 一度ろ過(Sなどを除く)し、ろ液に、濃NH3
5滴、1M (NH4)2CO3 25滴加え、炭酸塩の沈殿ができる。 30ml石英るつぼで加熱し(沈殿熟成、サラサラの粉末になる)、沈殿確認しながら(NH4)2CO3
数滴加える。 pH確認(pH9−10) (注意: pHが低く、 (NH4)2CO3が CO2過剰になっていると、弱酸性の HCO3−となって アルカリ土類金属は水溶性になる。)
ろ過し、沈殿(CaCO3、SrCO3、BaCO3)を 水10mlで洗う。 沈殿を、6M酢酸25滴 +水で落として 5mlとし、そのろ液に1M酢酸アンモニウム10滴+0.5MK2CrO4
6−10滴(Baに対し小過剰になるように、沈殿を見ながら)加えると、BaCrO4(黄色の細かい沈殿) が沈殿するので、綿をきつく詰めてろ過し、もし漏れたら 再度戻してろ過する。 水5mlで3回洗う。洗浄水もろ液に加える。 ろ液@。 (K2CrO4小過剰の場合、Sr、Caは沈殿しない。
大過剰の場合はSrCrO4も落ちるので注意。)
BaCrO4 の沈殿を綿ごと石英るつぼに入れ、0.1M HCl 5ml、ホルマリン5滴を加え
溶かし出し、加温してしばらく置く。(CrO42−の還元、黄色→薄青緑) 溶液を2分し、一方は蒸発乾固し 0.1M HCl3滴に溶かし炎色反応を見る。(Baの黄緑色) 炎色反応を見る限りは Sr は混じっていないようである。 もう一方は、濃NH3
5滴と 飽和CaSO4 5滴で BaSO4の白色沈殿(Cr(OH)3が混じり青白色)。 (Ba の確認)
先のろ液@に、6M酢酸 15滴、0.25M硫酸ヒドラジン 15滴を加え
湯浴中で加温(残っているCrO42−の還元、黄色→薄青緑、 SrSO4の白沈)、ろ過し、水25滴で洗う。(ろ液A)
沈殿は SrSO4であり、少ないので、綿ごと石英るつぼに取り出し 1M
(NH4)2CO3 50滴加え数分間煮沸する。 沈殿はSrCO3に変わり、このぬれた綿をろ過管に再度入れてろ過し、2回ろ液を戻してろ過する。 水20滴で洗浄し(この洗浄水は捨てる)、6M酢酸
10滴、水50滴で 溶解させて落とす。これも2回戻してろ過する。
溶液を2分し、一方は蒸発乾固し 0.1M HCl 5滴に溶かし、炎色反応を見る。(Srの深紅色) 量が少ないので、短い間しか色が出ない。 もう一方は、濃NH3
5滴と 飽和CaSO4 5滴で SrSO4の白色沈殿。 (Sr の確認)
ろ液Aに 0.25M硫酸ヒドラジン 1滴落として沈殿のないことを確認し、30ml石英るつぼで加熱濃縮し
3mlとする。 溶液を3分し、一つ目は、蒸発乾固し 0.1M HCl 5滴に溶かし、炎色反応を見る。(Caの橙色) 2つ目は、濃NH3 5滴、5%シュウ酸溶液一滴を加えると、シュウ酸カルシウムの白沈。 3つ目は、6M NaOHで 強アルカリ性(pH≒13)にして カルセインを2滴加え、紫外線ダイオードで紫外線を当てると、緑色の蛍光を発する。(ただし、これはSr、Baも反応する) (Caの確認)
* 第2属Bの分析は、Hg2+がHgSが溶解せず第2属Aに行ったので、多硫化ナトリウムを再調整して 再チャレンジしたいと思います。(↓)
(追記) 25’ 1/16
● Na2Sxの調整: Na2S・9H2O 2.1g、 NaOH 3g、 S 0.01g に水を加えて25mlとし、加温し よく振り混ぜて溶かす。(硫黄微量、強アルカリ性、 by.化学同人)
● 試料液 X液: Cu2+、Cd2+、Hg2+、AsO43- ・・・ 第2属A、第2属B (猛毒元素HgとAsを含む、 SnCl2とHgCl2は
Hgの黒沈になるので Sn2+は加えない) 系統分析フロー
・ CuO(M=79.5) 0.1g(0.001mol) + 濃HNO3 0.3ml
+ 水で 約1mlにしたものに溶かす(少し加熱)、 CdCl2・2・1/2
H2O(M=228.3) 0.2g(0.001mol)、 HgCl2(M=271.5) 0.27g、 As(ヒ素、M=74.9)
0.1g を濃HNO3 0.6mlに加熱して溶かして ヒ酸(H3AsO4)にしたもの(溶け残りがある場合は上澄み)
を混合し、水に溶かして30mlとする。 6M HNO3 4滴加えておく。 ・・・・ 各約0.03M、 計30ml
試料液 X を、2ml分取。
チモールブルー(TB)一滴を加え、1M HCl を滴下・撹拌し pH=1.5〜1.2(黄色味が完全に消え、ピンク赤色)になったら、そこから 1M HClを 10滴加える。 NH4I 2滴を加えて加熱し、As(X)→As(V)に還元する。(赤褐色のヨウ化水銀が沈殿するが加熱すると溶ける。)
ばっ気装置にセットしH2Sを通す。(CuS、CdS、HgS、As2S3 の黒褐色沈殿)換気注意 沈殿をろ過管でろ過し、0.1M HCl・H2S飽和液 3mlで沈殿を洗浄する。(第3属以降はないので、洗液は捨てる)
沈殿を綿ごと石英るつぼに取り出し、Na2Sx 2ml加え 加温、綿を抜いて、さらにNa2Sx 2ml加え、ろ過し、0.1M NH4NO3・H2S飽和で洗浄 → ろ液@(HgS22−、AsS42−含む)
沈殿を綿ごと 石英るつぼに入れ 水2mlで洗い落とす。 6M HNO3 2ml加え、煮沸後、6M
HNO3 8滴加えて 蒸発乾固、さらに加熱してSO3の白煙を出す。 3M H2SO4 2滴+水2ml加えて溶かす。 (ここでは、不溶性のPbSO4は残らない)
溶液に 濃NH3を2滴加え(ここでは、Bi(OH)3は沈殿しない)、液を二分する。
一方に、フェノールフタレイン一滴+酢酸で中和して、K4Fe(CN)6一滴入れると、フェロシアン化銅の
赤褐色沈殿ができる。(Cuの確認)
もう一方に、1M KCNを2滴加え(Cuがある場合、H2SでCuSは沈殿しない。色は薄くなる)、さらに H2Sを通す。換気注意 CdSの黄色沈殿。(Cdの確認)
先のろ液@に、6M HCl を加えて pH≒9(pH紙)とし、加温すると 再び硫化物が沈殿(HgS、As2S3)するので、ろ過し ((0.1M HCl・H2S 飽和液 4滴 + 水2ml)で洗う。洗浄液は捨てる。 6M
HCl 2ml加えてろ過管ごと加温し、ろ過し、もう一度 6M HCl 2ml加えて、さらに戻してもう一度
洗い落とす。 ろ液は、SnS32−、SbS43−を含まないので 捨てる。)
沈殿はHgSと As2S3であり、温水4mlで洗浄し、綿ごと石英るつぼに入れ、6M NH3 20滴 + 3%H2O2
10滴を加え 加熱し、ろ過してもう一度戻してろ過する。 水2mlで洗浄する。(ろ液A)
沈殿(HgS)を綿ごと石英るつぼに取り出し、5%NaClO 4滴、6M HCl 2滴、水
2mlを加え 煮沸すると沈殿は溶ける。 プラピンで綿を絞る。 溶液は HgCl42−。これを2分し、0.5MSnCl2 一滴を加えて 金属Hgの黒色沈殿。 また 濃NH3 2滴、1M NH4I 2滴、6M NaOH(6〜14滴、過剰量)を加えると
褐色沈殿(ネスラー反応)。 (Hg の確認)
ろ液Aは、AsO43−になっているので、これに 濃NH3 10滴、マグネシア混液6滴を加えると 白色沈殿(As(X)の存在、MgNH4AsO4・6H2O)。 この沈殿をろ過し、綿ごと石英るつぼに取り出し、モリブデン酸アンモニウム
14滴、6M HNO3 10滴を加えて 加温すると、黄色溶液(ヒモリブデン酸アンモニウム(NH4)2AsO4・12MoO3)に変わり、冷却すると黄白色の沈殿となる。これに 少量のハイドロサルファイト(還元剤)粉末を加えると、モリブデン酸ヒ素錯体の濃青色(*)になる。 (As の確認)
(* NH3I は、HI ガス発生時に、赤燐からのリン酸の飛沫混入がわずかにあるが、この
NH3I を 純水2mlに2滴入れて モリブデン酸アンモニウムとハイドロサルファイトを一滴ずつ加えると、確かに青味がかった褐色溶液となるが、上記のように
2回もろ過、洗浄しているので、誤差範囲だろうと思われる。)
3. 第6属 および 陰イオンの定性分析:
(1) 第6属の定性分析:
第6属陽イオン(Mg2+、Na+、K+、NH4+)は、第1属〜第5属までの分析試薬から NH4+、Na+ などが混じってしまうので、系統分析の続きは無理で、個別に分析する方が良い。(第5属の後のMg2+は可能) Na+ は、炎色反応(Na‐D線の黄色)でかなり少量でも確認できる。
● Mg2+ の確認: 第5属のろ液のように、Ca、Sr、Ba を前もって落として第6属のみ(実質Mgのみ)にした液(約2ml)に、pH10 緩衝液(NH3(28%)57ml + NH4Cl 7g /100ml)を一滴加えて pH=10前後とし、BT(エリオクロムブラックT)を一滴加えると キレートを生じて赤色になる。 さらに、0.05M EDTA‐2Na を滴下すると、あるところで 青色に変わる。 これにより、使用したEDTAの滴数で、Mg2+ の半定量をすることができる。 (ガラスピペット等の一滴 ≒ 0.05ml)
● Mg2+ + Ca2+ の半定量: 天然水や水道水などの 「水の硬度」の値として、普通は Mg2+ + Ca2+ の量(mg/l)が用いられる。(参考) 3.(3)キレート滴定 ここでは、滴下した滴数で半定量を行なうものとする。 6M NaOH 1、2滴で pH≒13にすると、Mg2+は Mg(OH)2 となって沈殿し、反応の系外になるので、NN希釈粉末を指示薬とし EDTAでCa2+ のみが滴定される。 この差分が Mg2+の量になる。 (鉄分 などが含まれている場合は、トリエタノールアミン(Fe、Al)、KCN(Zn、Ni、Co、Cr)が
マスキング剤として加えられる。 Sr、Baはあらかじめ除去する。)
* EDTAの安定度は相当なもので、30年前に作ってポリビンに入れていた0.1M溶液の力価は、今も変わっていない。
一方、20年前に作ったBT溶液は 底に固まって変質していたので、再度作り直した。
● カルセインを使うと、pH=13(6MNaOH 一滴)で蛍光がいったん消え、Ca2+ で蛍光を発し、Mg2+ では光らない。(Ca、Sr、Baに特化した試薬)
● Mg2+ の選択的検出、定量分析は、チタンイエロー(C28H19N5Na2O6S4、顔料ではない)という試薬を用い、土壌や葉緑素中のMgの定量などに利用されている。
● K+ (、NH4+、Mg2+、Ca2+、Tl+) の沈殿確認:
・ 亜硝酸コバルチナトリウム(ヘキサニトロ コバルト(V)ナトリウム) Na3Co(NO2)6 (M=403.9)、
溶解度 72g/100ml水(20℃)でよく溶ける。(常に亜硝酸ガスを発しているので、亜硝酸検出薬から十分離しておくこと。) 一方、K+、NH4+は、KNa2Co(NO2)6、 K2NaCo(NO2)6、 K3Co(NO2)6 が混じって沈殿するので、定量分析はできない。沈殿の溶解度は
7.93×10−5mol/l(10℃) ≒ 3.1×10−2g/l = 0.0031%で 十分低いが、実際の沈殿速度は遅い。
K+ =5000ppmで 速やかに沈殿し、1000ppmでは 12時間かけて沈殿した。 0.03M程度の試料ならば 5倍くらいに濃縮した方がよいと思われる。
Mg2+、Ca2+については、Mg3[Co(NO2)6]2、 Ca3[Co(NO2)6]2 の単一組成で、定量可。
・ K+ 基準液: K+ 1000ppm (= 0.1%) = 0.027M ≒ KCl 0.20g/100ml
● NH4+の検出:
伝統的にネスラー試薬(K2HgI4、1856年・ドイツのネスラーが発見)を用いる。 (* 鋭敏な検出薬であるが、水銀の毒性を嫌って、最近では
共存するNO2−、NO3−の量から推定する方法が用いられている。)
・ ネスラー試薬の作り方: JIS規格に基づき、 K I 1gを水1mlに溶かす。
HgCl2 0.5gを 熱水2mlに溶かしたものを、熱いうちに少しずつ K
I 溶液に加えてよく振り混ぜる。(HgCl2液は冷えると結晶が出る。) 混ぜると黄褐色沈殿が生じるが、そのまま続ける。
KOH 3gを 6mlの水に溶かしたものを加え、よく振り混ぜる。さらに水を加えて全体で20mlとし、30分静置してその上澄みを取る。(ごく薄い黄色の溶液、 約1か月使用可能)
試料液は、NH4Cl 3.15g/100ml=10000ppmで、10倍に薄めて
1000ppmの溶液を作る。
ネスラー試薬は、試料液5mlに対し 3滴加えた。 褐色の沈殿ができる。(使用試験管は、φ17×163mm) 2HgI2 + NH3 +
3KOH → NHg2I ↓ + 3KI + 3H2O) あるいは、H2Oを含んで、 I Hg‐O‐HgNH2 の形になる。(ネスラー反応) 試料液が薄いと 透明感が出て半定量ができるようになる(?)。
(2) 陰イオンの定性分析:
陰イオンの系統分析は存在しないが、陽イオン分析とはそのまま逆に、陰イオンのうち、Cl−、Br−、I− は 硝酸銀(AgNO3)で(硫酸銀、リン酸銀、酢酸銀も沈殿するが)、 それぞれハロゲン化物になって沈殿する。(フッ化銀
AgF は水溶性) SO42−は 塩化バリウム(BaCl2)で落ちる。
● 亜硝酸イオン NO2− の比色半定量:
亜硝酸イオンの分析は、芳香族アミンと フェノール、ナフトール類とのカップリングによるアゾ色素(3.アゾ色素の実験)の原理により、例えば、1(α)‐ナフチルアミンと スルファニル酸の混合液を用いて行なう。(中2の時 川の水分析でやりました) ここでは、既製の NO2試薬(ナフチルジエチレンアミン法、S・T分析研、AMAZON)を用いて、NO2−の濃度を振って、色を比べてみた。(使用試験管は、φ17×163mm)
・ NO2− 1000ppm液 NaNO2 (M=69.0、 NO2−はM=46) 1.50g/l → これを1000倍に希釈して、1ppm液 = 1.5mg/l、 さらに希釈して、0.02ppm、0.05ppm、0.1ppm、0.2ppm の各5ml溶液を作る。NO2試薬を 2滴ずつ入れ、5分後の色を見る。 (NO2試薬の仕様書によると、比色定量の範囲は 0.013〜0.33ppm) 大体 0.05〜0.5ppm が色の変化が分かりやすい。0.02ppmでは、やっと赤みが分かるくらいで見えにくい。
水道水や NaNO3 からは検出されなかった。
● 硝酸イオン NO3− の半定量:
硝酸イオンの検出は、ブルシン法(論文・1970年)が昔から行なわれ、現在も 工場排水(JIS規格)や下水道、土壌、湖水・河川水などの正式な定量法となっている。 比色定量は面倒で
工作も要るので、ここでは簡単なテストをするにとどめた。 → アルカロイドの実験(2) 予定 ・・・・ 因みに、ブルシン(劇物)はストリキニーネ(毒物)の仲間で毒性が強いので注意。(この溶液をなめると、非常に苦い。
漢方の苦味健胃(くみけんい)薬、強壮剤)
・ NO3−試験液(KNO3 水溶液) 2ml、 ブルシン溶液(ブルシン硫酸塩・7水和物 1.284g/100ml水)0.3ml を試験管に入れ、濃硫酸 4ml(取扱注意)を 試験管の壁に沿って少しずつ入れ(硫酸を入れた瞬間だけ 赤紫色になる)、よく振り混ぜる。(希釈熱でかなり発熱する) 10分後に粗熱が取れた時点で、色を見る。(黄色) (使用試験管は、φ17×163mm)
・ 濃硫酸は 注意深くスポイトで注入。 液を捨てる時は 多量の重曹で中和して流す。
* 比色定量分析で直線性の良い色度の変化を見る方法は次のとおりである。 試験管を氷水に入れて硫酸による発熱が無いようにして混合し、その後 約60℃で40分間保持し、空冷後 室温で20分放置し、λ=405nmの吸光度を測定する。(ちょうど 紫外1のLEDの中心波長) 加えるブルシンの量は 0.2、0.4mlでは下がり
0.3mlで吸光度は極大となる。 この方法で、NO3−が 0.1〜2.5ppmで良い直線性が得られる。
** 硫酸のほかに 過塩素酸 HClO4 を加えると、亜硝酸 NO2− が酸化されて 硝酸イオンになるので、同様にブルシン法で測定することができる。
*** 逆に、微量NO3−の場合、銅、亜鉛触媒の存在下で硫酸ヒドラジンで還元すると、上記の亜硝酸の分析法をそのまま用いることができる。
● リン酸イオン PO43−の半定量:
リン−モリブデン法で行なう。 酸性条件で リン酸(H3PO4)を含む溶液に モリブデン酸アンモニウム((NH4)6Mo7O24・4H2O、M=1235.9)を加えると、 PO43− + 12MoO42− + 27H+ → H3PO3(MoO3)12(リンモリブデン酸、12‐モリブドリン酸) + 12H2O で黄色になり、さらに還元剤(アスコルビン酸、ハイドロサルファイト等)を加えると、4つのMo(Y) が Mo(X)に還元され、H4PMo(Y)8Mo(X)4O40(モリブデンブルー)の 濃青色になる。 (使用試験管は、φ17×163mm) (・・・ これは、同じ第15族の AsO43ーについて、第2属Bの ヒモリブデン酸アンモニウム(黄色沈殿)、さらにハイドロサルファイトによって濃青色沈殿の生成と類似している。)
・ リン酸一カリウム(リン酸二水素カリウム、KH2PO4、M=136.1、リン分P(M=31.0))
1.76gを 水に溶かして100mlとし、この10mlをホールピペットで量り取り
水で薄めて100mlにすると、リン(P)として、400ppm(=0.4mg/ml)の基準水溶液となる。 これをさらに薄めて使用する。
・ モリブデン酸アンモニウム((NH4)6Mo7O24・4H2O)は、0.5g/6ml純水 + 1:1 H2SO4 3mlの混合溶液を作り、試験液 5mlに一滴加え(ごく薄い黄色)、さらに5%アスコルビン酸水溶液を2滴加え 5分間放置すると
青色の溶液になるので、これを比色する。
・ コカ・コーラ(オリジナル)の酸味料に含まれている リン酸濃度測定: 50倍希釈で 約4ppmより、約200ppm=0.02%(Pとして)のリン酸分が含まれると推定される。
* 本来はここで、比色管に入れ、分光光度計で定量する(λ=823nm) 分光光度計の直線範囲は、0.5〜5ppmくらい。(参考ページによると、1ppm:吸光度0.109、2ppm:0.231、4ppm:0.477、8ppm:0.881) ・・・ 赤外線Di(λp=850nm)で簡易型を作ることができる。
● 亜硫酸イオン SO32−の検出:
ヨウ素酸−亜硫酸反応で行なう。 2 KIO3 + 5 SO2 + 4 H2O → I2 + K2SO4 + 4 H2SO4 このヨウ素は、デンプン液で 濃青色となって 検出される。 SO2 は 硫酸、リン酸等により、遊離状態にする必要がある。 デンプン液(1%)は、1か月以上置くと クラスター状に固まるので、作ってすぐ使用しなければならない。
・ 亜硫酸ナトリウム(Na2SO3、M=126.0) SO2(M=64.07)より、Na2SO3 0.20g/100mlで
SO2として、=1000ppm の基準溶液を作る。
・ 試料液 5mlに、1%ヨウ素酸カリウムKIO3 水溶液 1滴、 3M H2SO4 1〜2滴、 1%デンプン液 1滴を加え、2−3分置く。(馬鈴薯デンプンなので、作りたてでも
粒々が見える(青紫)。コーンスターチ(より鎖が短い、紫)の方がよいかもしれない。)
・ ワインやドライフルーツなどから検出するには(固形物は破砕して水に浸す)、
たとえば ワイン40mlを、100ml共栓付き三角フラスコに入れ、10%リン酸1ml、または
リン酸二水素カリウム0.2g+3M硫酸 0.5mlなどを加え よく振り混ぜ、しばらく置いて
SO2を気化させて、ヨウ素酸カリウム‐デンプン紙をぶら下げる。これは、約1%バレイショ・でんぷん液 と、1%KIO3 溶液を
1:2 くらいで混ぜた液に、短冊に切ったろ紙を半分浸したもので、浸して すぐに、栓に挟んでぶら下げ、10分位置く。 (3年前に作り置きしていたヨウ素酸カリ‐デンプン紙は 全く色がつかなかった。)
§ 硫黄と重金属との反応:
単体の硫黄は、鉄をはじめ 多くの重金属と、高温で直接 硫化物を作り、ボロボロにしてしまいます。 水溶液からは、pH がかなり低く(=酸性)ても、硫化水素により重金属の多くは硫化物となって沈殿します。 猛毒元素の水銀やヒ素なども、硫化物として系外に除くことができます。
重金属はしばしば硫化鉱の形で産出し、銅やニッケルなどの硫化鉱(CuS、NiSなど)は、精鉱(選鉱により品位を高めたもの)を作り、マット溶錬(マット:Cu2SとFeSなどの溶融物 を作ってから精錬)によって空気だけで、一気に 粗金属にまで精錬します。
(亜鉛鉱(ZnS)は無理で、一旦、酸化焙焼し、炭素を加えて蒸留。)
再生銀(金、パラジウム)の回収・精錬業者さんと 技術ディスカッションの機会がありました。
99.99%(フォーナイン)の銀を電解で得る際に、不純物のビスマスがどうしても入るのを解決したいとのことでした。 ビスマスは、加水分解しやすく、硫化物の沈殿ができやすく、溶液中に固体として浮遊しやすい元素です。 おそらく 電解採取の時、電解液から物理的に取り込みやすくなっていて、最初の硝酸溶解後、食塩を加えて塩化銀を落とす時
ビスマスも一緒に落ちているらしいです。(純銅で置換、または ヒドラジンで還元して電解前の金属銀を得る。) 銅や鉛の電解精錬でもビスマスは邪魔者になっています。
硫化水素や メルカプタンなどの硫黄化合物のにおいを消すために、同じ硫黄系の
二酸化硫黄(SO2、亜硫酸ガス)を用います。 すると あーら不思議、両者は打ち消し合って臭いはなくなります。
硫化水素と 二酸化硫黄が結合して、ほとんど無臭の単体硫黄と水になるからです。(トイレの消臭剤もこの原理)
鉄は、戦前は、「鐵」 すなわち、「金(かね)の王たる哉(かな)」と書きました。 戦後は、「鉄」 すなわち「金(かね)を失う」(?)になって、国内の製鉄業は不振となり、技術は外国に流れていきました。
鉄が真っ赤に錆びるということは、実は、鉄鋼の中に 「MnS型介在物」という、マンガンと硫黄の化合物(導体)が分散して存在し、そこがアノードとなって電池反応が起こり、鉄を積極的に腐食し「鉄さび」が生じます。
鉄鋼中の硫黄は、精錬に用いられる石炭からのコークスが起源で、歴史的に”鉄は錆びるもの”となったのは、イギリス産業革命からの出来事です。 だから鉄鋼の使用に際しては、さび止めやメッキ、ペンキ等が必須となっています。 一方、日本古来の鉄は、渡来したエドム人たちによって始められ、砂鉄(出雲)や褐鉄鉱(諏訪)と、硫黄をほとんど含まない「木炭」を用いているので、ほどんど錆びない、優秀な鋼となっています。 因みに、純鉄は空気中で錆びません。
銅(Cu)や ろくしょうなどの銅化合物は長い間、有毒と言われてきましたが、銅そのものの毒性は大したことがなく(銅製のなべなど問題なく使われている。銀器とともに殺菌作用がある)、銅に含まれるヒ素が原因と考えられています。 特に、日本古来の青銅はヒ素の含有量が高く、仏像などには世界的に見てもより多くのヒ素が含まれています。
また、大仏などの金メッキには、多量の金アマルガム(金と水銀の合金)が用いられ、それを塗って像ごと火で焼いて金をメッキしたので、猛毒の水銀は拡散し、建立当時は
多くの作業者や近隣に住む人々に多大な健康被害をもたらしたと考えられます。
それで、当時の外国からの天然痘などの疫病も加わり、仏像を”疫病神(やくびょうがみ)”と呼ぶようになりました。
水銀は、不老不死の薬として 秦の始皇帝の寿命を縮めた猛毒物質ですが、水銀を苛性アルカリと
硫黄とを混ぜて乳鉢で擦ると、条件が良ければ「朱」になります。 朱(HgS)は安定な化合物で、色が経年変化しないので、長い間 印鑑などの顔料に用いられてきました。
さて、聖書では、「硫黄」は 神のさばきに伴う 恐ろしい、破壊的な物質として、常に「火」のさばきに伴って記述されています。
重金属をも蝕んで ボロボロにする作用が そのようにたとえられていると考えられます。
ソドムとゴモラ、ゴグ・マゴク、悪魔とその使いたちに対する さばきです。
ソドム(同性愛の悪徳の町)があったとされる死海の南にある低地(現在
海抜マイナス400m)の遺跡には、「金の塩」(ヘンリー・グルーバー師聖会の初めの方)とともに 実際にほぼ純粋な「硫黄の玉」(分析の結果、98%S+マグネシウム、 その他の元素は無い)が壁の隙間のいたるところにあります。 近くに火山等は無く、神の超自然的な さばきの結果であることは明らかです。
ソドムは死海に埋没していて、四角い城壁のような跡や 建造物の跡のような小山が見える程度ですが、ゴモラでは、もっとはっきり分かります。元々石灰岩(CaCO3)で作られたスフィンクスや四角い城壁などの建造物は、表面の粉末が、硫化カルシウムを経てさらに酸化されて
硫酸カルシウム(石膏、CaSO4)になっています。(地熱活動による硫黄は不純物が多い(40%S程度)。 隕石説では硫黄は上空で燃え尽きてしまい、鉄や岩石しか隕石とはならない。) 塩については、ボリビアのウユニ湖と同様に、かつて死海が海だったからという説もありますが、金コロイドが分散した塩、「金の塩」ができるためには、金の沸点(2836℃)以上の高温になる必要があり、これは説明できていません。
→ True Ark (最近発掘されたタル・エル・ハマム遺跡は、死海北東部の”高地”。ここにも硫黄がある)
「そのとき、主は ソドムとゴモラの上に、硫黄の火を 天の主のところから降らせ、これらの町々と低地全体と、その町々の住民と、その地の植物を みな滅ぼされた。 ロトのうしろにいた彼の妻は、振り返ったので、塩の柱になってしまった。」 (創世記19:24−26)
「わたしは剣を呼び寄せて、わたしのすべての山々で ゴグを攻めさせる。 ― 神である主の御告げ。 ― 彼らは剣で同士討ちをするようになる。 わたしは 疫病と流血で彼に罰を下し、彼と、彼の部隊と、彼の率いる多くの国々の民の上に、豪雨や雹や 火や硫黄を降り注がせる。 わたしがわたしの大いなることを示し、わたしの聖なることを示して、多くの国々が見ている前で、わたしを知らせるとき、彼らは、わたしが主であることを知ろう。」 (エゼキエル38:21−23)
「しかし、獣は捕えられ、また、この獣の前でしるしを行なって、獣の刻印を受けた者とその像を拝む者とを惑わしたにせ預言者も、獣と共に捕えられた。そして、この二人は、生きたまま硫黄の燃えている火の池に投げ込まれた。」 (黙示録19:20)
「そして、彼らを惑わした悪魔は、火と硫黄の池に投げ込まれた。そこは、獣も、にせ預言者もいる所で、彼らは永遠に、昼も夜も、苦しめられる。」 (黙示録20:10)
分析化学は非常に小さな、デリケートな実験の積み重ねです。 しかし、これらの小さなことを忠実に行なうならば、多くの実践の機会が開かれ、大きなものを任せられるようになります。
「最も小さいものに忠実な人は、大きいものにも忠実であり、最も小さいものに不忠実な人は大きいものにも不忠実です。」
(ルカ16:10)
「あなたはわずかなものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ。」 (マタイ25:21)